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11 到着した日のこと(9/15)-1999.10.5wote-
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到着した日のこと。 エージェントがよこしたタクシーが空港まで迎えに来てくれ、私は新しい住処へと向かった。今回は私は部屋をほかのモデルの子とシェアすることになっている。一体どんなアパートなのだろう。ドキドキだった。前回はホテル住まいだった。そのときは一人で快適だったのだが、今度の共同生活がどんなふうになるのか、不安と期待でいっぱいだった。 車は1時間ほどだっただろうか、リパブリックより少し上のメトロではPoissonnierという場所に着いた。このあたりに来たのは初めてだった。車の中から通りすがりに覗いている限りでは、地元の人が利用するマーケットやお店が大通りにならんでいて住み易い地域のようにみえた。車は静かに路地裏に入っていき、到着!ドライバーは私の荷物をどかんと白い建物の前に置くとhere!といって去っていった。 私は突然不安になった。その建物、入り口は透明のガラス戸。中はこうこうと明かりがついていて、お店か何かのようである。アパートに来たはずが、一体ここはどこなんだろうと思ったのだ。 扉は不用心にも半分開いていた。おそるおそる中に入るとそこは白壁の天井つづく細長い部屋だった。いかにもモデルという子がぞろぞろいる。何人かが化粧台に座りメイクを施されている。シャンプー台も2つならんでいた。どうやら、この部屋の奥にはスタジオがあるように見える。キャスティングかスタジオなのかもしれない。なにもエージェントから聞いてなかったけれども、始めにどこかでいきなりオーディションがあることになっていたのだろうか。おろおろしながら私はその中の一人、スキンヘッドの男にExcuse meと声を掛けると、彼は腰掛けて待っていてくださいと言った。何人かのモデルがBOOKを抱えて座っているソファーにおずおずと割り込み座り私はしばらく待っていた。私の今回の滞在はそんな始まりだった。 スキンヘッドの彼が大家なのだった。彼は私を2階へと案内した。私が座って待っていたソファーの横にあった古い鉄格子で囲まれた門のカギをあけると、彼は螺旋階段をゆっくり上がっていく。私は彼に続いた。そこにはがらーん、としたフラットがあった。台所とテーブルがあり、その横にベット。その隣に大家さんの書斎らしき空間。すべてが一続きになっている。扉がついている部屋もあった。そこはもう一人のシェアの女の子がつかっているそうで、私には部屋らしき部屋は見あたらない。そうなのだ、ベットがあるあたりが唯一『私の部屋』ということなのだ。 私はぞっとした。全くプライベートがないではないか。洋服を着替えたり寝たりするとき、私は全く隠れる場所さえないのだ。それと安全に対する疑問を感じていた。この建物の入り口自体、あんなガラスの扉で番号カギであること。また下の部屋は知らない人が大勢いつも出入りしているようなところのようであり、そことの境界はあの頼りない門だけであるということ。なんて不用心なんだ。階段の下からは、話し声がすぐそこに聞こえ、階段のそばまで行くと下の階がすぐそこに筒抜けで見えるのだった。貴重品はどこにしまえばいいんだろう。金庫さえない。 私はキャスティングやオーディションでいろいろなアパートを回っているので、アパートというものは、用心深いつくりであることを知っている。まず建物は道路に面した頑丈な扉に閉ざされていて、番号カギを開けて入るようになっている。そしてそこには大きな螺旋状の階段またはエレベータがある。そのエレベータにさえ番号カギ掛かっているところも少なくなく、そして部屋にはいるにはまたカギと番号カギを使って入るというのが、ほとんどであった。そんなに厳重であっても、ほかのモデルの子が荷物をすっかり泥棒にとられたという話を聞いている。私はほかのアパートの重たい扉を思い浮かべ、それなのにここときたら!と思った。 私は今からでも逃げ出そう、と思った。全く安心感がない。不安だ。信用できない。泥棒に入られたらどうするんだ。この買ったばかりの最高速G3 400モデルDVDのパワーブックのことを思った。心配だ。今すぐここをでていこう。時計を見た。もう7時近くになっている。初めての場所でホテルを今から探すのはちょっと難しいかな、と思った。そこに大家さんが2階へあがってきた。私は不安げな様子をしている私に、彼は一生懸命、納得させようと説明をした。いろいろ話を聞いているうち私は今からホテルを探すのは面倒だ、今日はあきらめてここに泊まることにしよう、と思ったのだった。 |
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