InternetTimeは画期的だ

 ある日私がデザインの仕事から帰宅するやいなや、突然父が私に「いまいっちゃん新しいインターネットの大ニュースを知っとるやろ」と真剣な顔で言った。いつも父とはインターネット上のニュースを、会話でやりとりしているのだが、今回父はその重大ニュースを、あたかも私がそれを知ってて当然みたいに切り出してきた。「しらんよ、なに?」と私が答えると、「"Internet Time"たい」父は私の目を覗き込むようにいう。『何だそれは?』心の中の動揺を悟られないようにさりげなく「何ねそれ?」と私。「しらんのか」父は少し目を見開き呆れたような驚いたような表情を一瞬見せた。いつものやりとりだが、こういうときは込み上げてくる悔しさを押し殺して平然を装うことにしている。父はTinkPadを引き寄せて開いて私に自分の方にきて画面を見るように促す。タバコを挟んだ指をこみかみに添え眉間にしわを寄せながら説明し始めた。我が家の愛犬シルベットの写真を貼り付けたデスクトップ画面には小さなウインドウがあって、『@560』と表示されている。「これが"Internet Time"たい、これはね・・・」
 どうやら話によると、@(アットマーク)の後ろの3桁の数字が時刻を表すらしい。どんな計算方法なのかと、と父に尋ねるとスイス時間を基準に一日を0-999までの数字で区切って時間を表示しているという。それは、インターネットの標準時(=共通の時間)であり、スイスのSwatch社が提唱したものという。おまけにその新しい標準時をパソコンやホームページに表示するためのソフトまでSwatchのサイトで配布しているという。
 なるほど、確かにインターネット上の世界共通時刻なるものがあってもよかったことに気がついた。これはコロンブスの卵的、かつ画期的な発明ではないか!。私はだんだん父の意図するところが飲み込めてきて"Internet Time"というものに興味を持ち始めた。そうか、これがあれば海外のページを見たとき時差を計算することなく同じ時間を共有できる。わたしは目を輝かせて"Internet Time"の表示時刻が数をふやしているのをみていた。まさにインターネットの世界が一つになったように感じられた。「例えば海外のウェブサイトでインターネットライブ中継をみるときも"Internet Time"で告知してあったら便利やもんねえ。」というと「そうっちゃ、ページ更新日付だって確実なものが分かるんやけ。」と父。
 早速わたしも自分のデスクトップにMac版"Internet Time"時計を入れてみることにした。実際に使ってみると困ったことに"Internet Time"はとても分かりづらいことに気がついた。60進法で進んでいるのではないため、分と秒で時間を考える習慣が染みついた私にはさっぱり時間の感覚がつかめない。今2:42a.m.だが@780と表示されている。これは結局のところ、時差を計算するのと同じように@時間も通常の時計の時間に計算し直さなければならないのだ。もちろん慣れれば@〜だけで分かるのかもしれないけど、これに慣れるのはかなり時間がかかりそうだ。また、このweb用やデスクトップ用の"Internet Time"時計は時間表示部分よりもswatchロゴが大きくやけに目立つ。ここまで大きいロゴはスペースとるし目障りだ。わたしは後で自分用に改造しなくてはと思った。
 それからしばらくして、私が出たショーを見るために母とパリに来ていた父であったが、すかさず日本未発売のSwatch『.beat』を買ってきていた。そのSwatchはふつうの時間と一緒に"Internet Time"も表示できる時計だ。まだ、"Internet Time"がこの先普及するかは分からない。でも、私にとっても気になるものの一つだ。