パリ・コレ、デビュー!!

 私は突然パリコレに出ることになった。ショーの一週間ほど前、永澤陽一さんのオーディションに呼ばれた私はその場で日本から出演するただ一人のモデルとして合格を告げられた。そしてショーの2日前、買ったばかりのスーツケースを携えた私は単身パリへ旅立った。
 11時間のフライトの後シャルルドゴール空港に到着すると一足先に現地に乗り込んでいたスタッフが私を迎えてくれた。ホテルへ向かうタクシーの中で私は初めて目にするパリの風景に目を見張った。私の目にはパリの街すべてがパリコレクションの舞台であるかのように映っていた。
 最初の2日間、私は永澤さんを始めとしたスタッフの全員と落ち合って、フィッティングやミーティングをした。このとき初めて知って驚いたことに、今回のショーで私はトップバッターでありショーの最後も務めるという。初めての檜舞台にしてはなんとも重大なポジションである。みんなのショーに対する集中力や熱気がひしひしと伝わり、にわかに私の緊張感も高まった。ぴりぴりとした空気に鳥肌が立つ感じ。
 とうとうショーの当日。会場までは今回のスタイリストであるソニア・パークさんと一緒にタクシーで乗りつけた。会場はポンピドゥセンターの通り沿いにあるEspase SERNAMというところだった。大きなコンクリート張りの倉庫を改造した建物で天井のガラス窓から柔らかい光が射し込んでいる不思議な空間。今日ここでプレタポルテが行われるのだ。フロアーにボルトで据え付けられた大きな荷量りとファッションショーとの取り合わせもシュールだった。
 ショーの3時間前になると舞台裏にははモデルも揃いはじめさっきまでの静けさがうってかわり戦場のようになった。壁側にずらりと並んだ白い鏡台に向かって、かも氏率いるヘアメイク勢が一斉にモデルに長い付けまつげをつけたりはずしたりやり始めた。私も30分掛けてメイクやヘアを施された。ふと、だれかに呼ばれて会場に出ていくと、遠くからでも一目で分かる人物が2人立っていた。日本から遠路遙々私の晴れ舞台に駆けつけた両親の姿だった。日本だろうとパリだろうと変わらないこのロッカースタイル、父はサングラスにいかしたスーツ姿、全身黒の皮ずくめの母。私が駆け寄ると、父は今回用に買い換えたばかりののビデオカメラを回しながらにこっとした。母が真剣な顔で「ようこ、がんばりよ」と言ってくれる。2人はライブがあるから今日を終えたらすぐ帰らなくてはならない。わずか3日間の滞在だ。本当にショーをみるためだけに地球の裏側まで来てくれた2人だった。
 かくしてショーは始まった。本番が始まるとさっきまでの緊張は、嘘のように消え去った。ショーに集中することだけを考えていた。会場が静まり返ると幻想的な音楽が始まりを告げた。私はショーの第一歩を踏み出した。お客の顔は目に入らない。ただざわめきだけが聞こえてくる。天井からの自然光と強いライト、絶え間ないフラッシュでショーはさながら光の洪水だ。私は今回のコレクションのロマンチックな女学生のようなイメージに浸りながらキャットウォークを進んでいく。あっという間にクライマックスの永澤さんと私が一緒に出てくるシーンになった。永澤さんと腕を組み、私は舞台から両親に向かって微笑みかけた。拍手が心地よかった。私も心から永澤さんを始めスタッフ全員に心から拍手を送った。
 私は昨日パリから戻った。さっそくAltavistaでParis Collectionを検索してショーのレポートを探す。フランス語のファッションサイトのパリコレクションのレポートが見つかった。「あった!・・・あ、」おもむろにブラウザに浮かび上がってきたのは、ウォーキングしているの私の姿だった。